「仰る通りですね。では私はこれで失礼いたします。」
逃げるが勝ちだ。
もう今日この瞬間のことはなかったことにしよう。
「先に言っておくけど。」
「はい?」
「俺は、君のことが嫌いだ。」
…ほーう。
これは喧嘩を売られているという認識でオッケー?
「それは申し訳ございません。今後努力して参りますね。」
「軍人は人の命を軽んじる。己の自己満足のために剣を振り無意味な血を流して、弱き者を虐げる。そんな人間が、俺には理解が出来ない。」
…抑えろ。我慢だ私。心を落ち着かせろ。
「レン様の優しいお考え。私も…思うところはございます。そんな優しさで溢れた世界を目指すために、私は剣を振っているつもりでございます。」
「……。」
「そしてその軍人の力で、国そのものを守ることに繋がることをお分かりいただけると幸いです。」
この人は、優しいとかそれ以前に。
現実を知らないただのクソガキだな。
この世は、夢だとか希望だとか綺麗なものだけを集めたって生き残れない。
だから軍人は、その綺麗なものを守るために汚れた戦場に立つというのに。

