(一)この世界ごと愛したい




「陛下は長期の遠征があるらしいから、しばらく戦はなさそうだ。」



この時期の長期遠征。


どこまで行っても阿呆王だな。本来奪われた領土を取り返すなら早いに越したことはない。


相手が奪い返されることを考慮し、策を講じたり砦の如く強固な土地に変化させていってしまうから。だから、遅くなればなるほど奪還のための次の戦が難しくなる。




「情勢を把握するのに動きやすいのは今ってことね。」


「他の王子もいるし完全自由じゃないからな。」


「分かってるよー。」




そんなことは無論、分かっている。


この王宮にいる限り全員敵だし、その全員が王の味方だと思っておかないと。




「とにかく明日は、今日の憂さ晴らしに稽古場で打ち合いでもしようー。」


「…はぁ。」