(一)この世界ごと愛したい




セザール王は困惑と、少し恐怖の色を浮かべた目で私を見る。




「…何のマネだ。姫よ。」


「もう戦神になるのはやめようと思って。元々柄じゃないし。」


「…剣を収めろ。今ならまだ許してやる。」


「ううん。許さなくていい。」




国王軍の兵達も慌てて私へ向けて剣を向け、王の救出を試みようとするが。


私がそっと、セザール王の首に剣を添えたことで途端に動きを止めざるを得なくなる。





「ひ…姫。何が不満だ。与えられる物は全て与えてやる。この国の物は全て姫に捧げよう。」


「んーじゃあ、前の戦で路頭に迷うノイン軍を私にください。」


「っ…それは……。」


「優しい陛下が私の顔を立てて、許してくれた彼等を私にくれるなら、この首は繋がったままにしてあげますけど。」




知らないと思っていたんだろう。


セザール王は罰が悪そうに目を逸らす。






「あれは…エリクが…。」


「…約五千人。どれほど無念だったか分かりますか?遺族の悲しみを考えたことがありますか?」


「私には関係のないことだ!!!」




民の痛みは王の痛みと。


民の苦しみは王の苦しみと。



私はそう思い続けていたパパの姿しか知らない。それが“王”というものだと思っていた。






「そもそも、あなたは王の器ではなかったってことですね。」


「何だとっ!?」







「死後の世界で、父に王の在り方について教えてもらってください。」








私はこの剣に、迷わず力を込める。




血飛沫が舞う。







ああ…。






これでもう、引き返せない。