セザール王は困惑と、少し恐怖の色を浮かべた目で私を見る。
「…何のマネだ。姫よ。」
「もう戦神になるのはやめようと思って。元々柄じゃないし。」
「…剣を収めろ。今ならまだ許してやる。」
「ううん。許さなくていい。」
国王軍の兵達も慌てて私へ向けて剣を向け、王の救出を試みようとするが。
私がそっと、セザール王の首に剣を添えたことで途端に動きを止めざるを得なくなる。
「ひ…姫。何が不満だ。与えられる物は全て与えてやる。この国の物は全て姫に捧げよう。」
「んーじゃあ、前の戦で路頭に迷うノイン軍を私にください。」
「っ…それは……。」
「優しい陛下が私の顔を立てて、許してくれた彼等を私にくれるなら、この首は繋がったままにしてあげますけど。」
知らないと思っていたんだろう。
セザール王は罰が悪そうに目を逸らす。
「あれは…エリクが…。」
「…約五千人。どれほど無念だったか分かりますか?遺族の悲しみを考えたことがありますか?」
「私には関係のないことだ!!!」
民の痛みは王の痛みと。
民の苦しみは王の苦しみと。
私はそう思い続けていたパパの姿しか知らない。それが“王”というものだと思っていた。
「そもそも、あなたは王の器ではなかったってことですね。」
「何だとっ!?」
「死後の世界で、父に王の在り方について教えてもらってください。」
私はこの剣に、迷わず力を込める。
血飛沫が舞う。
ああ…。
これでもう、引き返せない。

