そんな私たちを気にも留めず、彼は柔らかく甘い笑みを浮かべる。
「ね、千田?」
…この人が千田さんだったんだ。
スキンヘッドの人…千田さんは私に一瞬視線をよこしたかと思うと一気に顔を真っ赤にさせて、
「は、はいっっっ!!!」
と辺りに響き渡るような大きな声で返事をしていた。
大きな声はやっぱり吃驚するけど、意外につぶらな瞳をしていたそんな千田さんにもう怖さは感じなかった。
「ということだから、ごめんね?千田にスクーター貸してあげてくれないかな?」
そう小首を傾げながら微塵も申し訳なさを感じさせない彼だったけれど、その甘い声のトーンにどうしようとぐらついてしまう。
お店の、ロバートさんの大切なスクーター。
「(そんなに乗りたいのかな…)」



