若頭の側近である俺にも媚を売る奴は腐る程いる。
ご機嫌取りというように、男は持ち駒である女を捧げ、女は自分のステータスを満たすためにその身を捧げる。
俺はいい。女の子が嫌いなわけでもないし、都合のいい欲の捌け口が簡単に手に入ればそれは男として嬉しくないわけない。若の隣に立つうえで、迷惑はかけない程度に好き勝手にやらせてもらっている。
でも、若は違う。
樋口組のトップに立つあの男をそんなに甘くみられては困る。
「若はお前が用意するような安っぽい奴を相手にされるほど落ちぶれてはいない。まぁ、俺もあんたみたいなのが用意するような安っぽい女は御免だけどね」
蒼褪めガタガタと震え出したおっさんは、およそ10分前の放漫な態度とはまるきり変化していて、なんとも滑稽だった。



