数分だったかもしれないし、ほんの数秒だったかもしれない。
いつのまにか彼に引き込まれていた私は、ハッと目が覚めたかのように頭が冴え返ると直ぐに柱の影に隠れて小さく深呼吸をした。
小さく高鳴る胸元を押さえながら一旦冷静になり、リストのことを思い出すと、もう一度店内をちらりと覗き見て様子を伺った。
…直ぐそこのカウンターまではなんとか行けそうかも。
いつもだったら見ず知らずの他人が近くにいたら大人しくしているはずなのに、
ロバートさんのお願いを守るはずなのに、
その時の私は早く仕事をしなくちゃという焦りと、先程から感じる変な動悸で、大胆な考え方をしていた。
静かに腰を低くして隠れながらカウンターにそろりと入ると、想像していたファイルは直ぐに見つかる。
慣れた手つきでページを捲っていくと目当てのリストが見つかり少しだけ気が抜けてしまった。



