女に引っ張られるようにして着いた部屋の中、男の人がいた。
見開いた瞳は、自分とそっくりな瞳。
なぜか一緒に来た女と、自分そっくりの男が激しく言い争いをしていた。
その日から、場所が変わってもまた同じような時間を1人で過ごしていた。
ひとつだけ変わったことはテレビがあって。
外の世界も言葉も何も分からなかったから、テレビにしがみついて必死で学んだ。
リスニングがなんとなくできるようになって、此処がイギリスという国で、日本という場所から来たんだということが分かった。
そして、あの女が日本人、自分と似ている男がイギリス人。
じゃあ、自分は何人なんだろうと疑問が浮かんだ。
名前というものがあるみたいだけれど、一度も呼ばれたことがないからきっと自分には名前というものはないんだと、そう学習した。
暫くして、また女に外に連れ出されて長い長い時間をかけて日本に戻ってきてしまった。
やっと言葉を理解してきたのに、また違う言語が行き交っている。
もう、頭がぐちゃぐちゃになった。



