ケラケラと笑い続けている彼女に、静かに花束を差し出した。
「わぁ〜綺麗ねぇ〜?くれるの?ありがとぉ〜」
つい数分前の出来事なんて忘れたかのように、花束に夢中になっている彼女を見つめたまま、ゆっくりと立ち上がった。
なんて、愚かな人。
私がどんな想いを込めて花束を作っているのか、全然、知らないで。
……自分だけ何もかも忘れて、解放されて。
「もう行っちゃうの〜?」
見上げてくる濁った瞳をただ無機質に見つめ返して、無言で踵を返した。
こんな時こそ彼のことを考えたいのに、頭の中が真っ黒に染まって何も考えられない。
急に、今まで感じたことのない恐怖が芽生えて胸が痛くなった。
こんな醜い自分、彼には絶対見られたくない。
どんなに卑怯者でもいい。
彼にだけは知られたくない。嫌われたくない。
こんな自分を知られて、捨てられるのが怖いっ…
お願いだから、どうか気づかないで。



