独特の消毒の匂いを感じながら、足を止めることなくゆっくりと進めていれば声をかけられた。 「こんにちは、笠原さん。今、中庭にいるわよ?」 「…ありがとうございます。」 優しく声を掛けてくれた見知った看護師さんにお礼を言って、教えてくれた通り中庭に足を運んだ。 ゆっくりと足を進めている私の心はいつもよりも落ち着いていて、全部彼のおかげかもしれないと自然と硬くなっている表情も柔らかくなる。 いつもだったら無心になるのに、こんな時でも頭の中には彼がいる。