「…それが間違ってたのかもしれない。
本当は普通の男の子として、平凡に、何にも囚われずに幸せな人生を歩めたはずだったのに…」
そう言って目を潤ませているあやめさんの背中を雅紀さんはゆっくりとさすっていた。
「ルカはうちに来てから、常に雅人の一歩後ろを歩いてたの。子供らしくしなさいってどんなに言っても、いつもいい子すぎて逆に困っちゃうくらいだったわ。
…雅人の側近に決まった時は、もっと自分の感情を殺していつか潰れちゃうんじゃないかって、とにかく心配だった」
「あいつはそんなに柔じゃない。それに側近になると決めたのはルカ自身だ。お前は悪くないだろう?」
「そんなの!優しいあの子のことだもの、恩を感じて引き受けてくれたに決まってるじゃない!
…あの子だって人間だもの。
辛くて苦しいことだって沢山あるのに、それを私達は分かち合ってあげられなかった。
私が引き取らなければ、あんなに自分の感情を殺すこともなかったはずなのに…」
悲痛なあやめさんの声だけがこの場に響いた。
知らなかったルカさんの姿を知って、
雅紀さんのルカさんを信じている気持ちとか、
あやめさんの大切に想うあまりの自責の念とか、
全部に、ただ胸が痛くて仕方なかった。



