彼の去って行く後ろ姿をずっと見つめたまま、何も伝えられなかった自分が本当に情けなかった。
「レイちゃん、ルカをよろしくね?」
「…え?」
ぼんやりと一点を見つめてしまっていた私の耳に、あやめさんの声がすっと入ってくる。
「……ルカには幸せになってもらいたいの」
そう静かに言葉を紡ぐあやめさんも、それを黙って聞いている雅人さんも、とても優しい表情をしていてルカさんのことを大切に想っているんだと伝わってくる。
「…ルカが此処に来たのはあの子が小学校低学年のときだったかしら」
どこか遠くを見つめるように、そう話し始めたあやめさんの表情は悲哀に満ちていた。
「ルカの母親とは昔から縁があって。でも、病気で他界してね。ルカは唯一の肉親が母親だけだったの。…葬儀の日、1人佇んでた小さな姿から目が離せなくてほっとけなくて。ルカをうちで引き取ることにしたのよ」



