何をしていても、ふと、気づいたら彼のことを考えてしまっていて。
自分の頭の中の殆どを占めている彼と、これ以上一緒にいたらもう本当に後戻りできないような気がして。
早く、早くいつもの日常に戻りたいと焦っていた。
でも、どう踠いても、得意の無心になろうとしても、どうしようもないくらい彼の声が耳にへばりついて離れない。
𓂃𓈒𓏸
『レイちゃん、ひとりで食べるの大変でしょ?はい、どーぞ?』
『…えっと、手は動かせます…』
『俺に甘えるってこと、そろそろ覚えて?』
『レイちゃんって髪染めたことある?』
『いえ、一度も…』
『そっか。髪まで可愛い。ずっと触ってたい』
𓂃𓈒𓏸
目を開けても、閉じても、全然離れてくれない。
彼と出会ってから献身的に介抱してくれたこの数日までの、彼の甘い台詞がどれも鮮明に何度も何度も脳内を駆け巡って、これ以上は危険だと頭の中で警鐘を鳴らしていた。



