「レイちゃん、今回のこと本当にごめんなさい。愛子を庇ってくれてありがとう。体調はどう?」
俯いていた私にそう優しく声をかけてくれたあやめさんに、再び顔をそっとあげてみるけれど。
"ありがとう"…そう言われて、複雑な気持ちになる。
ついさっきも同じように言われたことが、ぼんやりと頭に浮かんだ。
『いや、礼を言うのはこっちだ。愛子を庇ってくれて本当に感謝してる。巻き込んで悪かったな。怪我は大丈夫か』
雅人さんにもあやめさんにも感謝されて、謝罪までしてもらったけれど、私が勝手にやったことなのに。
みんな愛子さんのために言葉を紡いで、頭を下げる。
お義母様と慕うあやめさんにそんな風に思ってもらえて、愛子さんはいまどんな気持ちなんだろう。
ふと、隣の彼女に視線をうつすと彼女は目をうるうるとさせて眉尻を下げていた。
あやめさんはそんな愛子さんにそっと手を伸ばすと、優しく頭を撫でながらとても温かな眼差しを向ける。
「(…ーー愛子さんは沢山の人に愛されてるんだ)」
そう、人から人への"愛"を感じられて、きっと普通だったら胸が温かくなるはずなのに。
感じるのは自分に対する虚無感だけで。
胸が、きしきしと軋むだけだった。



