意外にも黙って静かに手を進めてくれる愛子さんに、私もじっとされるがまま、そっと目を閉じた。
温かいタオルが気持ちいい。
暫く丁寧に包帯を避けて拭いてくれていたのに、急に手が止まった。
そして、そっと傷口の上に指先が添えられる感覚がする。
「……傷、残るかもって」
そう、ぽつりと呟いた愛子さんの言葉に目を開ける。
「そうですか。」
淡々と、どこか他人事のように私もぽつりと返した。
愛子さんがどんな顔をしているのか分からなかったけれど、なんだか悲しそうな声色だったような気がする。
…そんな悲しむことなんてなにもない。
私は後悔もしていないし、頬の湿布は痛々しそうだけど元気そうな愛子さんを見て安心した。
きっとこれが愛子さんだったら、樋口さんは凄く悲しんで、そしてそんな樋口さんを見てルカさんも酷く傷ついてしまうから。
これで良かった。
あの時、頭にできたサイクルは樋口さんと話していて正解だったんだと分かったから。
ルカさんの傷つく顔を見なくて良かった。
そう、さっき彼と会って改めて思った。



