「あの、私帰ります。」
今一度千田さんにそうはっきりと伝えると、千田さんに代わって高めの強い声が答えた。
「そんなの駄目に決まってるじゃない」
「お嬢!!」
千田さんにつられて声がした廊下のほうに視線を向けると、頬に湿布を貼った愛子さんが立っていた。
「そんなのルカに怒られるに決まってる。千田、ちょっと下がってくれる?」
「へい。失礼しやした。」
突然の登場に呆然としていると、千田さんは直ぐに何かを察したのか頭を下げて去って行ってしまった。
「ほら、何ぼーっとしてんのよ。身体拭くわよ」
そう言った愛子さんの手元には、湯気がたっている桶とタオルが握られていて。
襖の前で立ち竦んでいる私を引っ張って、布団に座るよう促された。



