ずっとずっと、ただ目の前のことを黙って受け入れて生きてきたのに。
逃げたいなんて感情も知らなかったのに。
目覚めたときからずっと頭の片隅にある"あの電話"。
本当は気づいている"彼"への気持ち。
今の自分は全部から逃げていて。
もしかしたら、あの時———繁華街での一件事、急いで“あの場所”に行かなきゃいけないと分かりながらも、自ら愛子さんを庇ったのは、今までの自分から逃げたいという思いも少なからずあったからかもしれない。
そう思うとどこまでも自分は狡くて、醜くて、愚かなんだと自己嫌悪に陥って、身体は熱いのに頭はどんどん冷えていく。
でもどんなに足掻いたって"あの人"から逃げられない事は分かりきっていて。
そう冷静になってくると、ゆっくり起き上がって視線を彷徨わせた。



