そう淡々と、でもどこか悔しそうに言葉にする樋口さんを見て内心驚いた。
彼にもこんなに人間味溢れているところが隠れていた。
そして愛子さんにも、やっぱりクルクマの花のように本当の愛子さんがあの強気な姿の裏に隠れていたんだ。
「政略結婚だとか、家同士が決めたとか、色々言われてるがそんなの俺には関係ない。俺は、ちゃんと愛子自身を見てる。…だけど、あいつには上手く伝わらないもんだな。あの日も怒らせて、俺から離れていって、その隙にあんな事になった。本当情けねぇな」
そう自嘲気味に言い放った樋口さんは、ただの男の人だった。噂されている、絶対的支配者とか、冷酷な人だとか、完璧なカリスマだとか。
最近意識して聞いてみると、そんなことを囁かれていたけど、やっぱり百聞は一見にしかずなのかな。
ふと、愛子さんが言われていた言葉を思い出した。
『あんたなんて所詮、コネで雅人様の婚約者になれただけじゃない!すぐに捨てられるわよっ』
『藤堂組なんてすぐに潰れそうなのにぃ〜。雅人様もほっとけばいいのにねぇ〜?』
家柄とか、立場とか、周囲の批判とか、複雑に絡まった中でふたりとも踠いているんだと、分からないなりにそう感じた。



