丁度ご本人がいて良かった…
どうしてお邪魔しているのか分からないけど、樋口さんのお宅でお世話になってしまったみたいだから挨拶しなきゃ。
そう思ったのに、喉が詰まって声が上手く出てこない。
そんな私の様子に気づいてくれたのか、樋口さんが自分の手元にあったミネラルウォーターのペットボトルを私に差し出してくれた。
「未開封だ。飲んだほうがいい」
低く淡々とそう言ってくれて、申し訳ないと思いながらも頭を下げて素直に受け取った。
「……ふぅ…」
冷たい水がカラカラの喉を潤してくれて、やっと落ち着く。
日本庭園には朝日なのか、白い光が差し込んでいてキラキラして見えた。
もう夜が明けていたんだと、漸く少しずつクリアになってきた頭の中で理解していく。
「…ありがとうございます。それに、色々とお世話になってしまったみたいで…」
座っている目上の方に見下ろして話すのは失礼だと思い、少し距離を置いて横に正座した。
足の甲に当たる冷んやりとした木の廊下が気持ちいい。



