「もう!ほんと良い顔してるわ!さぁ、貴方達うるさいからレイちゃんが起きちゃうわ。ほら、顔洗って雅紀のとこにも伝えにいくわよ!」
あやめさんは俺の背中をバシバシ叩きながら部屋から連れ出して行こうとする。
その後押ししてくれているかのような力強さと少し涙目のあやめさんに、何故か胸が熱くなる。
良い意味で俺はどんどん進化できている。
全部レイちゃんのおかげだ。
「すまんな、レイちゃん。…おおっいけない!レイちゃんへの見舞いの花束を忘れてきたなぁ〜。Mr.センダ、君も一緒に店に来てください。花束を届けてくださいな」
「エッ?エエッ!?」
ロバートさんは、無理矢理千田と肩を組みながら部屋を出て行った。
こんなに騒がしい中でも、静かに目を閉じている彼女の顔に振り返る。気のせいか、長すぎるダークブラウンの睫毛は微かに濡れているような気がする。
「ほら、愛子も謝りたいって言ってたわよ!皆んなも心配してるんだから少しは顔を見せてあげなさい?」
無理矢理ずるずると引っ張られるようにして彼女が眠っている和室を後にする。
早く、あの綺麗で凛とした声が聞きたい。
そう思いながら、静かに足を動かした。



