あやめさんは目を大きく見開いて驚いている様子だった。
しんと静まり返った張り詰めた空間の中、
人が真剣になっているというのに、
徐々に、我慢できなくなったかのように聞こえてくる鼻をすする音。
「うっ…ズズッ…ズズッ」
「……。」
「ぅうっルカさん…かっこよすぎますって。ずるいっすよそれは…ぐすっ…おぇっ…」
「……。」
こいつは本当になんなんだ。
ギロっと刺す勢いで諸悪の根源を睨みつけた。
ちゃっかり部屋の隅で正座をしながら話を聞いていた千田は、大きな体を震わせてぐすぐすと汚い嗚咽を漏らしながら空気をぶっ壊した。
「はっはっは!頼もしい騎士ですなぁ〜!ライバルとしてこれからもよろしく頼みますぞ?」
泣き出した千田を皮切りに、豪快に笑い声を上げたロバートさんはお茶目にウィンクをしてきた。
ライバルって…その言葉に自然と頬がひきつる。



