「…ルカ、入るわよ?」
彼女の寝顔を見つめていると、襖の外から控えめな声が聞こえてきた。
あやめさんか…せっかく彼女の寝顔を堪能してたのに。
大きな溜め息を態とらしく吐き、返事をした。
「ちょっと、今溜め息吐いたでしょ?」
あやめさんは頬をひきつらせて、静かに入ってきた。
「早急に用件をお願いします。」
そんなあやめさんを受け流して、淡々と声を出した。そんな俺を見て今度はあやめさんが盛大に溜め息を吐く。
「ルカ、いい加減にしなさい。気持ちは分かるけど、貴方のせいで組全体の空気が凍りついてるのよ?」
俺の気持ちなんて分かるわけない。
どれだけ俺が彼女のことを考え、愛慕を寄せ、陶酔しているのかなんて、
誰にも理解してもらいたくない。



