なんでお嬢がレイちゃんの携帯から…と疑問が浮かんだが、今はそんなことより、
「助けてってどういうこと?ねぇ、レイちゃんは?レイちゃんにとりあえず代わってよ」
お嬢には悪いけど、何がなんでも今は彼女の声が聞きたかった。
『……っと、兎に角!!今は説明なんてしてらんないから!急いで!あと、医者も用意しときなさい!!』
その言葉に頭の中で警鐘が鳴り響く。
「……場所は?」
…そう冷静に聞けてたような気もするし、かなり苛立ってたような気もする。
その後の自分の記憶はかなり曖昧だった。
人間は嫌な記憶ほど、蓋をするかのように目を背ける。
でも、断片的な記憶の中でも、最も苦しい記憶だけは鮮明に覚えていて。
忘れてしまいたいくらいなのに、この先、一生残ってしまうんだと俺は身をもって知った。



