今はしつこいと思われてもいい。
ただ彼女の声を聞いて安心したい。
そう思いながらまた発信しようとしたとき、仕事用の携帯が鳴り響いた。
大きく溜め息を吐き、耳に当てる。
『愛子がいなくなった。』
「…了解」
若頭の一言で全てを理解すると、直ぐに電話を切って千田に静かに指示する。
「お嬢がいなくなった。急いで」
若を迎えに行こうとしていた道中、こんな時に限って厄介なことが起こった。
ずっと俺の頭の中にいる彼女…レイちゃんに突っかかったお嬢は許さない。
でも若頭の大切な婚約者でもあり、俺にとっても護るべき存在だ。
冷静にお嬢を捜索して、レイちゃんのいつも通りの声を待っていればいい。
そう頭では分かっていても、第六感が無意識に働いて耳の中で不快な心臓の音が響く。
もう一度溜め息を吐きかけた時、また携帯が震えた。



