ぼんやりとしてきた意識で、自分でも不思議な感覚に陥っていると隣から再び大きな声が聞こえてきた。
「ちょっと!しっかりしなさいよ!アンタ携帯ある!?私さっきぶっ壊されたから!早く助け呼ぶのよ!!」
外見とは程遠い言葉遣いが悪い彼女の大きな声に、無意識に顔が歪むのを感じながら視線を彷徨わせた。
黒いキャスケットの近くにさっき持っていたはずの鞄も転がっている。
私の視線に気がついた藤堂さんは、ふらふらと立ち上がって足を引きずりながらその場に向かっていた。
彼女もだいぶ痛そうだな…
だんだんと視界がモザイクがかったように霞む中、自分の怪我よりも彼女の怪我の方が何故か心配になった。
もう最近の自分がよく分からない。
分からないことばかりで疲れる。
「うわっ何この着信の数!しかも全部ルカじゃない!」
もう何も考えたくないと、瞼を閉じようとしたとき『ルカ』と聞こえてきてもう一度重い瞼を薄っすらと開けた。



