「こいつがすまない。樋口組若頭の樋口雅人だ。で、婚約者の藤堂愛子。これから世話になる」
漆黒の瞳を真っ直ぐ向けてそう言ってくれた。
樋口さんは悪くないのに…いい人で良かった…
ロバートさんに報告しなくちゃ。
偉い人なだけあって威厳ある姿で、これからもお店をご贔屓にしてくれると言われて安心した。
そんなことを思ってしまっていた私をよそに、ルカさんはまだまだ冷え切っているブラウンの瞳を樋口さんに鋭く向けた。
「雅人、今日は完全プライベートな時間をくれるって約束してくれたよね?だからここ何日もこの日のために死に物狂いで働いたんだけど?ちゃんと教育しといてよ。次はないからね。」
酷く苛々しているのか、ルカさんは珍しく早口でそう捲し立てていた。
その様子にも驚いたけど、樋口組の偉い人にそんなこと言えるなんて…
ルカさんってほんと一体何者なんだろう…
驚いていたのは私だけではなく、意外にも樋口さんもずっと無表情だったのに、分かりづらいけど若干目を見開いて驚いている様子だった。
やっぱり珍しいんだ。
私よりもルカさんのことを知っているであろう樋口さんのほんの僅かのその姿を見てそう思った。



