「なに?」
「その、ちょいと厄介なことが起こっちまいまして…明日オープンするキャバクラ、エンジェルズへの開店祝いの花がまだ用意できてないんすよ」
「……え、そんなこと?明日新オープンするとこって山城組の管轄の所だよね?代々うちが世話になってる花屋はどうしたの?」
なんとも困ったように眉尻を下げてそう相談してきた千田に、
エンジェルズって店の名前考えた奴誰だよ。
なんて、そのネーミングセンスに引っかかったものの。
いつも何かと必要になる花を買い付けている馴染みの店を思い出した。
確か店主は結構いい歳していたが、うちの事情をよく分かってくれていた。
今回のような祝い花をはじめとして、ここ樋口組の日本庭園に咲き乱れる花、屋敷の中に飾る花、大事な行事やパーティー会場で飾る花…
なにかと花屋には世話になることが多く、代々信頼を置いていた店があったのに。
千田が物凄い勢いで近付いてきたから、とんでもなく組にとって厄介なことが起こったのかと思ったけど意外な相談事で拍子抜けした。



