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箱根には魅力的なドライブコースが多い。
今回は御殿場から箱根裏街道を南東へ下ることにした。
乙女峠をこえ仙石原にさしかかると、ちょっと林道へ足を踏み入れてみた。
はやる心を押しとどめて、あえて時間をかけて寄り道を楽しみながら目的地に向かう。
愛車のSUVの高めの車高から眺めわたす紅葉のトンネルを、助手席の瞳子は気に入ってくれているだろうか。
古風ともいえる “交際” を始めたが、自分はそれを全うしようとしている。
リアリストで享楽的な面が大いにあると自覚しているが、根っこにあるのは平凡なサラリーマン家庭で育てられた堅実さなのだ。
そして自分以上に堅実さを重んじる瞳子を、ラブホテルという即物的な場所に連れ込む気にはなれなかった。
かといって自宅もためらわれた。オーディオセットとホームシアターに大型ソファを揃えた、自分の心地よさを追求している空間だ。
女性をもてなす場所ではない。
箱根への週末の一泊旅行は彼女への誠意の表れだった。本気で向き合わなければ瞳子の心は動かない。
全く手がかかると思うが、それで彼女が手に入るなら安いものだ。つまり相当瞳子に惚れているのだろう。
箱根には魅力的なドライブコースが多い。
今回は御殿場から箱根裏街道を南東へ下ることにした。
乙女峠をこえ仙石原にさしかかると、ちょっと林道へ足を踏み入れてみた。
はやる心を押しとどめて、あえて時間をかけて寄り道を楽しみながら目的地に向かう。
愛車のSUVの高めの車高から眺めわたす紅葉のトンネルを、助手席の瞳子は気に入ってくれているだろうか。
古風ともいえる “交際” を始めたが、自分はそれを全うしようとしている。
リアリストで享楽的な面が大いにあると自覚しているが、根っこにあるのは平凡なサラリーマン家庭で育てられた堅実さなのだ。
そして自分以上に堅実さを重んじる瞳子を、ラブホテルという即物的な場所に連れ込む気にはなれなかった。
かといって自宅もためらわれた。オーディオセットとホームシアターに大型ソファを揃えた、自分の心地よさを追求している空間だ。
女性をもてなす場所ではない。
箱根への週末の一泊旅行は彼女への誠意の表れだった。本気で向き合わなければ瞳子の心は動かない。
全く手がかかると思うが、それで彼女が手に入るなら安いものだ。つまり相当瞳子に惚れているのだろう。



![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)