he said , she said[完結編]

「悪いです…片岡さんのインテリア探しのはずなのに」

小さくとも陶磁器の皿を収めた袋は、確かな重みがある。

「悪いですより、ありがとうって言ってほしいな」
いたずらっぽく笑いかける。

「…ありがとう」
恥ずかしがってうつむく様が、なんとも可愛らしい。

「それと、片岡さんじゃなくて、そろそろ名前で呼んでほしい」

瞳子が顔を上げる。濡れた二つの黒目がこちらに向けられる。この真っ直ぐな瞳が欲しい。

「直弥、さん」

心を決めた声と感じるのは先走りすぎだろうか。



ディナーは代官山にほど近い中目黒にあるフレンチを予約していた。
ひところ流行ったネオビストロのスタイルを継承している店といったところだ。

普段着でも行けるようなカジュアルな雰囲気だが、味には本場仕込みのシェフの技が光る。
ホールを仕切るマダムもTシャツにエプロンという格好で、いかにも気さくな接客をしてくれる。

仕事の付き合いで訪れたのが最初だったと思うが、気に入って自分でも使うようになった。
その空間に瞳子を連れて足を踏み入れる。