he said , she said[完結編]

瞳子の手には、水色と藍に彩色された皿がある。
いちばん気を引かれている一枚のようだ。

一万円札で釣りがくる値段は、直弥にとってどうということはなく、このタイミングが相応しいと思えた。

「今ちょうどいろいろ入ってきたタイミングなんです。工業品ではないので、一度売れてしまうと次がなかなか…」

瞳子が手にしている皿に目を落とす回数が増えている。
心の天秤が「欲しい」ほうに傾いているのが伝わってくる。

「それ、もらおうよ」と言いながら、すっと足を進めて二人の視界に入りこむ。

えっ、という形に口を開けて瞳子がこちらに視線を振り向ける。

「すごく素敵じゃないか」

「あ、でも…」

戸惑う彼女の手からひょいと皿を抜き取って店員に渡す。
「これ下さい」そして付け加える。
「プレゼント用で」

店を出たところで、小さな紙袋を「どうぞ」と瞳子に差し出した。

「片岡さん、こんな…」
瞳子の目には喜色より戸惑いが浮かんでいる。

「今日の記念に」という台詞は我ながら気障だが、瞳子はおとなしく両手を出して袋を受け取った。