he said , she said[完結編]

美味しいですねと、向かいに座る瞳子に笑いかける。

たまに来る店だと、パスタを口に運びながら瞳子は言った。
普段は、弁当を買って社内の飲食スペースで昼食を済ませることが多いという。

女性と食事をする際に気をつけるべきは、食べる速さを抑えることだ。
こちらにペースを合わせようと相手を焦らせては、会話どころではなくなってしまう。
直弥は意識して一口を控えめにして、ゆっくり咀嚼(そしゃく)する。

そうしながらプロジェクトをとっかかりに話を広げてゆく。
「アメリカの企業では、一般的に汎用システムをカスタマイズして使用しています。そうすると一度覚えると転職した先の会社でも使えるので、システムを習熟するインセンティブが働くみたいですね」

そうなんですねと、向かいの瞳子が目を丸くする。

「日本企業は自社の業務に最適化した、専用のシステムを求める傾向にあります。社員第一主義といいますか。どちらもメリットデメリットがあるので、どちらがいいとは一概に言えないですけど。出羽守(でわのかみ)ではないので」

でわのかみ? と瞳子が目を(しばた)かせる。