he said , she said[完結編]

「暮林さんと村瀬さんは、そのあたり大丈夫でしょうか」
何食わぬ顔で聞いてみる。

「はいわたしも村瀬も独身ですので」
お気遣いなくとつぶやく。

万が一ということもあるので確認だ。既婚の女性を口説く趣味はない。
とどめるものが無くなったところで、直弥はプロジェクトにかこつけ言葉を(ろう)して瞳子の個人情報を引き出すことに努めた。

大学卒業後、新卒で入社して三年目(ということは今年で25歳だ)、実家から通勤している、と。
次の関門はもちろん現在交際相手がいるかどうかだが、ここはじっくり攻めることにしよう。

雑談をはさんでやり取りしていると、30分はあっという間に過ぎ去った。

「よろしければお昼いかがですか」
話の続きのように投げかける。
午後からはIT部門の方と打ち合わせでまたここに戻るので、と畳みかける。

「あ、でしたら…」
すんなりと瞳子はこちらの誘いに乗ってくれた。