一ノ瀬さん家の家庭事情。®️

そっとあたしと玲の部屋の扉を開ける。

中は電気が付いてなくて、真っ暗だ。

あたしはその暗闇の中に入った。

「玲、あの…そこ、あたしのベッドだよ?」

玲は二段ベッドの下、あたしのベッドの中に潜り込んでいた。

「…グス…」

えっ!?

もしかして、泣いてる!?

玲が泣いてるのなんて、あのお父さんたちのことがわかったとき以来見てないよ!

「…玲、全部あたしに…話したかったら話して?話したくなかったらいいから。」

うまく言葉が出てこないから、イライラする。

あたしは玲の力になりたい。

だって大切なあたしのお兄ちゃんだもん。

「…俺は、母さんのこと何も覚えてない。」

布団に潜ったまま、ゆっくりと話し出す玲。

お母さんが亡くなったのはあたしたちが生まれてすぐ。

だからあたしも玲も、お母さんと唯ちゃんと暁君には写真でしか顔は知らない。

「本当の母さんのこと、全然知らないのに、…いいのかなって…」