一ノ瀬さん家の家庭事情。®️

あ、浅丘君…

その名前を思い出すだけで、あの光景が、感覚が蘇って顔が、全身が熱くなる。

「愛ちゃん?」

「あはっ、あははっ!玲ってばなんの役なんだろうね!」

なんとかごまかす。

危ない危ない、これじゃあたし、完璧に挙動不審なやつだよ。

「うーん、それが全然教えてくれないの。聞いても不機嫌になっちゃうから、聞きづらくて。」

へえ、なんでだろう。

でも玲のことだ。

劇とか、みんなで盛り上がろう!みたいなのを面倒くさく思うあいつはきっと、裏方、の裏方。

ほとんど仕事がないような役なんだろうな。

「あたしたちも負けないように頑張らないとね!」

はるひちゃんが言った。

そうだ、いくら大好きな人のクラスだからって負けてられない!

「一ノ瀬!危ない!」

えっ?

「きゃっ…!」

飛んできた何かを避けようとして、足元が揺れる。

ガシャン!

嫌な音がして、冷たい何かがジワジワとあたしの下半身を侵食していく感じ。