【Quintet】

「UN-SWAYEDのジャケット、いつも素敵な絵だと思ってたの。どんなデザイナーさんが描いてるのか気になってたんだ。お父さんに聞いても教えてくれなくて」
『デビュー前はジャケットはプロに任せるつもりだったんだ。でも沙羅のお父さんが俺に描かせてみたらって言ってくれて。試しに描いた作品が制作サイドに評判良くてさ。ジャケットは俺が担当することになったんだ』
「へぇ。お父さんもたまには良いこと言うね。ジャケットは星夜の絵にして正解だよ! だって曲の世界観とジャケットのデザインがいつもぴったりだもん。こんなに世界観ぴったりな絵を描けるのはUN-SWAYEDメンバーの星夜だけだよ」

 沙羅に褒められるのは誰に褒められるよりも嬉しい。薄々感じていた心の甘い痛みをまた笑って誤魔化した。

『たまには良いこと言うって、葉山さんは業界では売れっ子の音楽プロデューサーなのに。沙羅はお父さんに対しては扱い酷いよなぁ』
「だって、お父さん本当にたまにしか良いこと言わないよぉ。今日来たメールもね……」

 口を尖らせて父親の愚痴を溢す沙羅の顔は笑っていて楽しそうだった。本音は父親が大好きなのだ。
そんな沙羅が羨ましかった。