【Quintet】

 しかもプロデビューしているUN-SWAYEDの音の一部を担うのだ。余興やプライベートでの演奏とは訳が違う。

「私にできるかな……?」
『さぁ。それは父さんにもわからないなぁ』
「そこは“沙羅ならできるよ!”って言ってよぉ!」
『あははっ。僕は沙羅はUN-SWAYEDの音と四人の性格を誰より理解しているピアニストだと思っているよ。四人と沙羅の心の調和は完璧だ。彼らも沙羅の演奏なら安心して音を乗せられる。春からの同居生活で、そこまでの信頼関係を四人と築いてきただろう?』

 音と音の調和の難しさはクラシックのアンサンブルで何度も経験している。音色には演奏者の性格や心が如実に現れる。

アンサンブルのメンバーで、ひとりでも心が揃わない者がいれば、その演奏は耳障りな不協和音を生み出してしまうのだ。
四人の音に沙羅の音が加わっても不協和音にはならない確信が父にはあるのだろう。

『この件を沙羅に話す前に、悠真くんに相談したんだ。彼はこれからの沙羅に必要なのはピアニストとしての自信だと言っていた。自信をつけるには経験を積むしかない。悠真くん以外の三人にも昨日話したんだ。皆、大喜びで賛成してくれた。あとは沙羅の気持ちと覚悟の問題だよ』

 誰だってはじめの一歩を踏み出す時は怖い。
でもその一歩を踏み出せたら、少しは何かが変わるかな?

ひとりでは怖いはじめの一歩も、あの四人と一緒なら踏み出せそうだ。
そうしていつか、ひとりでも。
ちゃんと一歩ずつ、前に進めるように。

 まずは五人揃って「せーの」の掛け声で。
はじめの一歩を踏み出してみよう。