【Quintet】

 父はのほほんとしているようで鋭い。こうなることも、最初からすべてお見通しの同居だったのかもしれない。

「お父さん……、悠真と海斗の気持ち知ってて私と同居させたんでしょ? おまけに星夜との婚約騒動もあって、私がどれだけ大変な目に遭ったか……」
『沙羅ちゃーん、そんな怖い顔しないでー! 結果的に初恋の人と結ばれたんだ。沙羅と悠真くんにはハッピーエンドじゃないか。海斗くんと星夜くんもいい男だ。彼らにも春はやって来る。お祖父さんは星夜くんを気に入っていたから、残念がっていたけどね』

 海斗と星夜も今でも隙あらば口説いてくる。二人とも沙羅と悠真を別れさせようとは思っていないようだが、自分の気持ちを押し殺す気もなさそうだ。

困ったことに沙羅を巡る四角関係はまだまだ継続中。イケメン達の求愛に日々翻弄される娘の気持ちを少しは考えて欲しい。

『週刊誌に撮られた件も聞いたよ。沙羅が僕と美琴の娘であることは、どうしたって隠せない。そのことで沙羅には今までにも沢山嫌な思いをさせてしまったね』
「お父さん達の娘で良かったって思ってるよ。お父さんもお母さんも大好きだから。……お母さんは強かったんだね。週刊誌に追われたり妬まれたり、色々と大変だったはずなのに私の思い出にいるお母さんはいつも笑顔で、キラキラした天才ヴァイオリニストで、舞台の上のお母さんが眩しかった」
『美琴だって泣いていたよ。それに彼女は本当は天才じゃない。美琴は確かに絶対音感を持っていた。だけど天才ではない。葉山美琴は努力の人だったんだ』

 幼かった沙羅は母親のキラキラとした表面上の姿しか知らない。

美しい音色を奏でる美琴の指は魔法使いの指だった。その指が魔法の音を作り出すまでに、一体どれだけの血と涙を流したのか。