悠真が去って社長室にひとりになった吉岡は時間を確認した。東京は間もなく12月2日の午後1時を迎える。
アメリカは12月1日の夜。向こうはプライベートな時間だろう。彼は自分の携帯電話からアメリカにいる葉山行成に通話を繋いだ。
『お前が昔のことを悠真達に話したおかげでアイツらから散々な目に遭わされたんだが。悠真達の計画を知った上で、協力するお前の気が知れない』
{あなたが美琴の熱烈なファンだったと彼らに伝えただけですよ。それが純粋なファンとしての応援だったのか、男としての感情だったのか僕には知りようがありません}
『ふん。だからお前は気に入らない』
{僕はあなたのこと、これでもけっこう気に入っているんですけれど。美琴の忘れ形見の沙羅を守っていただいて感謝します。24日の最終リハーサルには間に合うように帰国しますので積もる話はまたその時に}
アメリカとの通話が切れた携帯電話を懐にしまい、彼は昔を回顧《かいこ》した。
吉岡が現役の役者だった23年前。
当時音大生だった美琴が出演した演奏会で吉岡は美琴の演奏に惚れた。今思えばそれは美琴自身に惚れたも同然だった。
音大主催のコンサートや彼女が出演する演奏会やコンクールにはどれだけ仕事が多忙でも必ず足を運び、最高の音色を奏でる最愛のヴァイオリニストに特大の花束と賛辞の拍手を贈った。
遠目から美琴の才能を見守っていた気持ちはいつしかそれだけでは物足りなくなった。吉岡は17歳も年下の美琴に恋をしていた。
アメリカは12月1日の夜。向こうはプライベートな時間だろう。彼は自分の携帯電話からアメリカにいる葉山行成に通話を繋いだ。
『お前が昔のことを悠真達に話したおかげでアイツらから散々な目に遭わされたんだが。悠真達の計画を知った上で、協力するお前の気が知れない』
{あなたが美琴の熱烈なファンだったと彼らに伝えただけですよ。それが純粋なファンとしての応援だったのか、男としての感情だったのか僕には知りようがありません}
『ふん。だからお前は気に入らない』
{僕はあなたのこと、これでもけっこう気に入っているんですけれど。美琴の忘れ形見の沙羅を守っていただいて感謝します。24日の最終リハーサルには間に合うように帰国しますので積もる話はまたその時に}
アメリカとの通話が切れた携帯電話を懐にしまい、彼は昔を回顧《かいこ》した。
吉岡が現役の役者だった23年前。
当時音大生だった美琴が出演した演奏会で吉岡は美琴の演奏に惚れた。今思えばそれは美琴自身に惚れたも同然だった。
音大主催のコンサートや彼女が出演する演奏会やコンクールにはどれだけ仕事が多忙でも必ず足を運び、最高の音色を奏でる最愛のヴァイオリニストに特大の花束と賛辞の拍手を贈った。
遠目から美琴の才能を見守っていた気持ちはいつしかそれだけでは物足りなくなった。吉岡は17歳も年下の美琴に恋をしていた。

