【Quintet】

 世間に正体が知られるまでのカウントダウン。あとどれだけ、こうして堂々と素顔を晒して出歩ける?

『圭織さんは何がしたかったんだろ。悠真もアキコさんの元旦那にしても、姉の男が欲しくなるってある種のシスコン?』
『自分の見る目に自信がないと人が持ってるものが欲しくなるんじゃねぇの?』
『そういう奴、男でも女でもいるよな。俺は純夜が持ってる物は別に欲しくもならなかったかなー。まず趣味が違うし。だけど親父から期待されてるアイツが羨ましくはあった』
『俺は羨ましくもならなかった。兄貴は俺とは違い過ぎて、憧れてた』

 海斗も星夜も兄がいる者同士。上には上の、下には下の苦労がある。
だが圭織の姉に対する歪んだ感情は二人には理解できなかった。理解したくもない。

『海斗も兄ちゃん大好きだよな。お前は滅多に兄ちゃん大好きオーラ出さないけど』
『俺がそんなオーラ出してたら気持ち悪いだろ……』
『……確かに。ヤッベェ、トリハダ立ってきた』
『でも沙羅の彼氏って立場にいる兄貴は心底ムカつく』
『ははっ。それは同感。なのに別れろとも思えないのが悔しいぜ』
『沙羅の泣き顔を見たくないからな』

 靖国通りの交差点。長い脚をもて余して横断歩道を闊歩する二人の顔には晴れやかな笑顔が浮かんでいた。