【Quintet】

 晴が釣り堀で桑田と接触した同時刻、場所は神保町。
並木出版のビルの一室に通された高園海斗はソファーに身を沈めて目を閉じていた。

このまま横になって眠ってしまえるほど身体は疲労していたが、ここを訪れたのは面倒な所用を片付けるためだ。

 海斗は昔から耳がいい。通路から聞こえるかすかな足音を彼の耳は捉えていた。そろそろ頭を覚醒させてUN-SWAYEDのKAITOの顔を作る頃合いだ。

「KAITOさんがいらっしゃるとは思いませんでした。ライブの準備でお忙しいのでは?」
『来たのがリーダーじゃなくてガッカリしました?』

部屋に入ってきた北山圭織に海斗は余所行《よそゆ》きの笑顔を向ける。圭織はふふっと機嫌良く笑って、海斗の向かいのソファーに腰を降ろした。

「いいえ、大歓迎ですよ。それでご用件は?」
『今日はエスポワール社長、吉岡の伝言を伝えに来ました。今後、北山さんが葉山沙羅と白木花音、UN-SWAYEDのメンバー全員に個人的な接触を図った時はエスポワール所属のすべてのタレントを並木出版の誌面には載せない、と』

 機嫌良く微笑んでいた圭織の顔がみるみる凍り付き、濃いブラウンのアイシャドウで彩られた目元が海斗をねめつけた。

「……本気で言ってるの?」
『社長からの伝言だと言いましたよね。一ノ瀬蓮と本庄玲夏も、北山さんが担当されているStarteen読者に人気の早坂北斗も、こちらから出されている雑誌の取材はお断りする方針です』

 エスポワールの二枚看板、一ノ瀬蓮と本庄玲夏は女性誌の表紙撮影やインタビューの仕事も多い。