【Quintet】

 桑田が出没する場所はあるネタを使って吉岡社長に揺さぶりをかけて聞き出した。“ネタ”の提供者はアメリカにいる沙羅の父、葉山行成だ。

『何の用だ? あんたと乳のでかい姉ちゃんの写真ならお宅の社長さんに買い取ってもらったが』
『俺の恋人も同居人も一般人です。俺達の大事な女をつけ回すのは止めてもらえますか』

 吉岡社長が買い取った写真の中には晴達が写っていない沙羅と花音単独の写真も多くあった。悠真と晴の恋人の素性を探ろうと、カメラマンは彼女達にも張り付いていたのだ。

『ドラマーさんも音楽ばかりやってねぇでちょっとは世間を知りな。俺はそれで飯を食ってるんだ。あんた達のスキャンダルが俺の飯代。人気バンドのメンバーの私生活を暴くほど楽しいものはねぇよ』
『音楽ばかりやってきた世間知らずは否定しませんよ。でも桑田さんも葉山栄吉を敵に回したくはないでしょう?』
『……あの女子大生の祖父《じい》さんか』

釣り堀の近くには市ケ谷駅があり、総武線と中央線の線路がすぐ側を通っている。たった今、総武線のホームに停車していた電車が発車した。

『ここだけの話を桑田さんに特別に教えちゃいますね。葉山栄吉さんと並木出版の会長さんは将棋友達らしいですよ』

電車が通り過ぎるのを待って晴は口を開いた。

『……まじな話か?』
『まじな話ですね。葉山さんは孫娘が可愛くて堪らないそうなので、大事な孫が週刊誌の餌食にされたら怒りますよねぇ。葉山一族って色々な業界に顔が利きますし、葉山の爺さんは怒らせたら大変ですよ』

 葉山栄吉には星夜が元婚約者の立場を利用して面会した。葉山栄吉を通して並木出版の会長への根回しは済んでいる。