【Quintet】

 抵抗もしない、けれど受け入れてもくれない人形の瞳をした沙羅を犯していたかもしれない。

『沙羅に泣かれると弱いんだ。ダメだってわかっていても抱き締めて離したくなくなる。晴がいなかったら押し倒してヤってたかもって考えると自分に幻滅するよ。はぁー……、もう沙羅のことは忘れてぇ……のに、一緒に住んでると忘れるのも無理だしぃー!』
『AV女優の香川くるみちゃんでも紹介してもらえば? くるみちゃんもお前を見たら飛び付くだろ。Gカップに埋もれてよしよししてもらえ』
『それもアリだよなーって思う。でもこのぽっかり穴は女と遊んでも埋まらない気がする。俺、自分が思ってた以上に沙羅に本気だったみたい』
『吹っ切れないうちはいくらでも好きで居続ければいいじゃん。片想いは自由だ』

晴の言葉に重みがあるのは彼も同じ経験をしていたから。

『晴は由芽ちゃん失くした穴、埋まった?』
『埋まった……というか、正直穴はまだある。一生埋められねぇよ。由芽の穴は由芽でしか埋められない。由芽の代わりはいないんだ。だけど気にならなくはなったかな。あの騒がしい女と一緒にいたら過去を懐かしむ暇もねぇよ』
『晴にとっての花音みたいな存在が俺にも現れてくれるのはいつでしょうねー』

 沙羅の代わりもどこにもいない。人は誰かの代替には決してならない。
沙羅への恋心は募る一方で消えてくれない。

 冬の冷たい雨は止む気配はなく、夜の東京を凍えさせていた。