【Quintet】

 北山圭織は怪訝な顔の沙羅を見据えて笑った。第一印象から嫌な雰囲気しかない女だ。

「YUUMAから何も聞いてない?」
「……何をですか?」
「あなたとYUUMAはデート現場を撮られたのよ。まだ知らないみたいね」

 傘に当たる雨粒の音が一段と大きくなった。交差点の信号はとっくに青になり、二人の横をサラリーマンが早足で通り過ぎる。

「YUUMAが年下、しかもあなたみたいなふわっとしたタイプを選ぶとはね。私の姉は派手めな女だからてっきり彼は姉のような女が好みだと思ってた」
「……お姉さん……?」
「悠真が高校生の時に私の姉と付き合っていたの。姉はその時は既婚者で、悠真は人妻に手を出していたってわけ。それで姉の旦那は傷付いて、離婚した。姉の元旦那は姉に心底惚れていてね。高校生のガキに妻を寝取られたことがよほど悔しかったのね」

 悠真が好きだと自覚した9月の夜。あの夜の彼の言葉を思い出した。


 ──今日誘ってきた女は俺が昔付き合ってた女の妹だった──


「9月の終わりに、悠真とお酒を飲んでいた人が北山さんなんですね」
「あら、それは知ってるのね。あの後ホテルに誘おうと思ったのに上手くかわされたのよ。表では穏やかに見せて裏ではすべて計算づく、平気で人妻もたぶらかす。YUUMAってそういう男なのね」

 悠真の中身を、さも理解したような圭織の口振りに苛ついた。合理主義の仮面に隠れた悠真の優しさを圭織は知らない。

別に知らなくてもいいのだが。悠真の良さはわかる人間にだけ伝わればいい。