【Quintet】

 ここで取り乱しても状況は変わらない。とにかく冷静になる必要があった。

『悠真クンはっけーん』
『……何か用?』
『機嫌悪っ。まぁ許可なく大事な沙羅とのデート現場を撮られたらねぇ、そうなるか』

 コーヒーを飲む悠真の隣に一ノ瀬蓮は座った。
9月から始まった連続ドラマの主演を務めている蓮は、悠真達の倍以上にスケジュールが詰まっている。どんなに過酷な日々でも疲れた顔を見せず明るく振る舞う蓮は一流の役者だった。

『何でも知ってるよな』
『社長からお前達の扱いどうしたらいい? って聞かれたもので。悠真と晴のネタ掴んだ週刊ルポルタージュの記者は桑田って奴だ』
『その記者知ってるのか?』
『俺も何度もそいつに狙われてるからねん。吸う? コーヒーと煙草は相性最高だぞ』

悠真は蓮のシガレットケースから煙草を一本取り出した。蓮に火をつけてもらって久々に吸い込む煙草は懐かしい味がした。

『……蓮はすげぇよ』
『は? え? 悠真の口からそんな言葉飛び出すとは。熱ある? 仕事根詰め過ぎ?』
『真面目に褒めてんだよ。たった一回の隠し撮りで落ち込んでるんだから俺もまだまだだ』
『お前も大人びてるって言ってもまだ25歳だ。動揺もするし弱音も吐く。悠真はひとりで背負い込み過ぎるんだよ。たまにはリーダーの責任降ろしたっていい』

 悠真が兄やリーダーの立場から降りられるのは蓮と晴の前だけだ。弟の海斗や星夜にはどうしても兄貴面をしてしまう。