【Quintet】

 明治通りから脇道に入って少し歩くと正五角形の巨大な建物が見えてきた。あそこが沙羅が通う音楽大学だ。

「音大って普通の大学と雰囲気違うよね。星夜の美大も元々はここにあったの?」
『昔はこの辺に芸大のでかい校舎がどーんっと建ってたらしい。うちの美大は92年に小平市にお引っ越し』
「引っ越ししなかったら沙羅ちゃんと同じ大学に1年は通えてたのにねぇ」
『それ惜しい! 俺も沙羅とキャンパスライフ過ごしたかったーっ!』

花音と星夜はかつてここにあった芸術大学の話で盛り上がっている。

 ガラス張りのガレリアや広場には模擬店が並び、焼き鳥とフランクフルトを食べて腹ごしらえを終えた五人は学内のコンサートホールに入った。

沙羅が用意してくれた席はホールの一階席最上段の中央。海斗、星夜、花音、晴、悠真の並びで着席した。

『沙羅の名前あった。出番は5番目、友達の織江ちゃんの次』

晴がパンフレットに記載された奏者の欄を指差す。沙羅の出番はフルート九重奏の次だ。


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 No.4【ヴィヴァルディ 四季より 春】
 フルート 朝田和馬 小倉真梨子 工藤怜奈 鈴木実紗
 津川竜一 中西夕紀 野本麻友 三谷織江 山本優作

 No.5【ドヴォルザーク ピアノ五重奏 イ長調 作品81 第四楽章】
 ピアノ 葉山沙羅/ヴァイオリン 照井真菜恵 松尾雪子
 ヴィオラ 川上晴夏/チェロ 福沢亜未
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『俺まで緊張してきた……。途中でミスらないか心配で胃が痛てぇ……』
『ドヴォルザーク嫌いになりそうー! って最初はテンパってたよな』
『あの曲は沙羅が得意な系統じゃないしね』
『あそこまで練習したんだ。沙羅なら大丈夫』

 沙羅が家の音楽室で自分のパートを夜遅くまで練習していたのを四人は知っている。何度も同じ部分でミスをしては悔し泣きして、悠真達に慰められ励まされながら、一生懸命練習していた。