【Quintet】

 美月も花音も細くて華奢なのに胸が大きい。何を食べれば彼女達のように身長が伸びてウエストは細いのに胸が大きくなる?

美月達と比較すると申し訳程度に膨らんだ自分のバストが悲しくなる。こんな子どもっぽい身体で本当に悠真を満足させられたのか、急に自信を失った。

「美月ちゃんはいいなぁ……。胸おっきくて細くて可愛くて、性格も優しいし……羨ましい」

 今日初めて挨拶した美月の父親と母親も穏やかで優しい人だった。中学生の妹も無邪気で可愛らしい子だ。
当たり前に両親が側にいて、当たり前に家族で食卓を囲める美月の家は幸せに溢れている。

 美月は沙羅の表情の翳りに気付いた。美月の家は確かに恵まれた家庭だとは思うが、高層マンションの最上階に住む沙羅の方がはるかに裕福だ。

沙羅はいつも「自分なんか……」と卑下して自身を過小評価している。

「沙羅ちゃんはどこか自信なさげだよね。なんでかなって気になってたんだ」
「……私ね、お母さんのことはとっても好きなんだ。大好きなの。だけど時々、お母さんの名前に負けそうになる」

 天は二物を与えずと言うけれど、美月や花音、悠真達を見ていると天は二物どころか三物も四物も与えている。
母、葉山美琴もそうだった。

「“ヴァイオリニストの葉山美琴”は絶対音感を持つ天才だった。私には絶対音感はない。だけど昔からピアノの先生も高校や大学の先生も、皆が私を葉山美琴の娘として見ている。葉山美琴の娘ならこれくらい弾けるでしょう? って言われてる気がするんだ。天才の娘は天才じゃなくて凡人なのにね」

天才の娘として扱われる無言のプレッシャーは幼少期から感じていた。周囲は葉山沙羅の評価ではなく、“葉山美琴の娘”としての評価で良し悪しを決める。