【Quintet】

 花音がオススメしてくれたマスカラを初めてつけてみた。綺麗にセパレートされて長くなったまつ毛を鏡で見て嬉しくなる。
ピアノを弾くために短く揃えている爪にもマカロンピンクのネイルを塗り、髪も巻いた。

 悠真の指がふわりと巻かれた沙羅の髪に触れる。

『俺も支度してくるよ。待っててね』
「うん」
『はいはいはいーっ、二人ともイチャラブは外に出てからねー!』

弁当用に余ったポテトサラダをパンに挟んでサンドイッチを作っていた星夜の声が、甘くなりかけた恋人達の空気を遮った。

『家だとうるさい外野が多いな……』
「後は私がやっておくから悠真は支度してきて」

 家の中だと星夜や海斗に邪魔されて二人の甘い時間が過ごせない。ぶつくさとぼやく悠真は二階に向かい、沙羅は悠真が作った弁当をランチバックにしまった。

『今日の天気はずっと晴れだって。良かったな』

リビングでテレビを観ていた海斗が教えてくれた。テレビでは天気予報が流れている。
11日の東京の天気は1日晴れ、予想最高気温は21℃。

「海斗達もお休みだよね。今日は何するの?」
『晴は昼から花音とデート。俺と星夜はボイトレの後に同じ事務所の友達とボーリング行って晩飯食って帰ってくる』
「そっか。友達もバンドやってる人?」
『今日会う奴らは俳優二人とモデル一人。俳優の方は沙羅が観てた月曜の恋愛ドラマに出てた早坂北斗《はやさか ほくと》』
「早坂北斗くんと仲良いのっ? やっぱり芸能人の友達多いんだね」

 悠真を待つ間、沙羅は手持ちぶさたに海斗の斜め前のソファーに腰を降ろした。星夜が作ったポテトサラダのサンドイッチを頬張る海斗は沙羅を一瞥する。