【Quintet】

『俺諦めるとは一言も言ってないしー? 悠真が作った玉子焼き食べる? あーん』

 どす黒いオーラを放つ悠真を気にしないマイペースな星夜は、切り分けられた分厚い玉子焼きのひとつをフォークに刺してかじり、残りを沙羅の口に運んだ。

反射的に開いた口の中に美味しい玉子焼きが入ってくる。

『俺の玉子焼き使っていちゃつくな』
『兄貴には悪いけど俺も諦めるとは言ってないしー?』

ひょいっと横から現れた海斗も玉子焼きを掴んで口に放る。悠真が作った玉子焼きは、摘まみ食いする星夜と海斗によって半分の量にまで減ってしまった。

『お前達……俺に喧嘩は売るくせに俺が作った玉子焼きは食べるのか?』
『それとこれとは別。沙羅はひとまず悠真を選んだけど、これからどうなるかはわからないじゃーん? 俺と海斗にも一発逆転のチャンスはあるよなぁ?』
『そうそう。兄貴が沙羅泣かせたりしたらすぐに貰っていくから。……腹黒な兄貴が作ったにしては、この玉子焼き美味いな』
『悠真が弁当作ってる! 中身なになに? 俺の朝飯になりそうな余り物ある?』

 起床した晴も加わってこの家は今日も賑やか。これがライブのチケットが全席完売間近の人気ロックバンドのメンバーの日常とは……ファンが聞けば仰天ものだ。

 二つの弁当箱には昨夜の唐揚げの残り、厚焼き玉子、ポテトサラダとミニトマト、にんじんのナムルなどが綺麗に敷き詰められている。

「お弁当全部作ってもらっちゃって、ごめんね。ありがとう」
『いいんだよ。今日は俺のためにお洒落してくれたんだろ? 可愛い』

 初デートの沙羅の服装はピンクベージュのブラウスと柔らかな茶系のレオパード柄のコーデュロイスカート。