【Quintet】

 沙羅も悠真とのキスに集中したいが、鍵のないこの部屋の扉を皆がいつ開けるかわからずヒヤリとする。

『ゆーうーまーくぅーん』
『あーそーびーまーしょぉー』

 扉を隔てた向こう側で聞こえる陽気な声は心なしか先ほどよりも大きくなっている。ついに悠真の舌打ちが発動した。

『……アイツら酔ってるな。沙羅、急いで服着て』
「は、はいっ」

 ショーツを履いて、ブラジャーをつけて、キャミソールを着て、ショートパンツを履いて、シャツワンピースを羽織る。

四人と同居を始めて半年。かつてこれほどまでにスリリングな早着替えがあっただろうか。

 沙羅の着替えを確認した悠真が扉を開けた。悠真の全身からどす黒いオーラが漏れ出しているのは沙羅の気のせいではない……はず。

『お前達、絶対わざとだろ?』
『あららー? お楽しみ真っ最中でしたぁ? ごめんなさーい』
『そう簡単には沙羅とイチャイチャさせねぇよ』
『酒たんまり買ってきたんだ。皆で飲もうぜー!』

立派な酔っぱらい三人衆が悠真の部屋になだれ込んできた。沙羅と悠真が甘い時間を過ごした部屋はあっという間に酔っぱらい達の集いの場となった。

頭を抱えた悠真は三人が沙羅に絡む前に彼女を廊下に逃がす。

『沙羅は下に戻って身体休めなよ。俺は仕方ないから晴達に付き合う』
「うん。皆、飲み過ぎないでね……?」
『おーうっ!』

 晴や星夜はいつものことだが、海斗がここまで酔っているのは珍しい。自惚れでなければ、海斗も星夜も恋の喪失を埋めるための酒盛りだ。

酒を呷《あお》って陽気に笑う海斗と星夜の目が赤く充血している。きっと知らないフリをするのが二人への優しさ。

 誰かの幸せは誰かの涙で作られている。
海斗と星夜の涙の上に成り立つ幸せを、沙羅は大切に抱き締めた。