【Quintet】

 次に沙羅が目を開けた時は悠真の匂いのするベッドの中で彼に抱き締められていた。

『身体、平気?』
「少しぼうっとする……」
『ごめん。無理させたね』

服を着ていない沙羅と服を着ている悠真が同じベッドで寝そべっている。自分だけが裸の状況がとてつもなく恥ずかしかった。

『10月の三連休の日曜日、休み取れたんだ。11日。沙羅は空いてる?』
「11日……うん。空いてる」
『デートしようか』

 それは恋人同士だけが使える特別な単語。
隣にいる綺麗な顔の男が恋人になった事実が沙羅は未だに信じられない。

『行きたい所ある?』

デートで行きたい場所は沢山ある。
いつか彼氏ができたら行きたいと夢に描いた湘南の海や横浜のみなとみらい、水族館に映画館にテーマパーク、挙げ出したらキリがない。

「……行きたい所はあるけど笑わない?」
『笑わない。沙羅が行きたい場所はどこにでも行くよ』

 初デートで行きたい場所は沙羅がずっと憧れていた場所。悠真の耳元でそこの名前を囁くと、彼はふっと息を漏らして笑った。

「笑わないって言ったじゃないーっ!」
『沙羅らしくて可愛いなぁって』
「もう。また笑った……」

むくれる沙羅の尖った唇に悠真の唇が触れる。唇を触れ合わせて軽めのキスを繰り返す二人は、自分達だけの世界に浸っていた。

『悠真ぁー!』
『悠真お兄様ー!』
『出てこいクソ兄貴!』

 部屋の扉を叩く大きな音と廊下で騒ぐ声が聞こえても、悠真は沙羅とのキスを止めない。

「皆が廊下に……」
『無視無視』

廊下にいる三人を気にする沙羅とは違って悠真は平然としている。彼は沙羅に覆い被さってキスを続けた。