【Quintet】

『兄貴の部屋行けよ』
「うん。また明日ね。……お休み」

 テラスと屋内を繋ぐ扉の開閉音を背後で聞きながら海斗は秋の夜空を眺めていた。雲の多い暗い空は月が見えたり隠れたりと忙しい。
少し経ってまた扉の開閉音がした。

『カーイーくんっ』
『鬱陶しいのが来た……』

 テラスに現れたのは星夜だ。先刻まで沙羅がいた場所に許可なく座った星夜は携帯電話の画面を海斗の前に晒した。

『観てみろよ。沙羅に似てるAV女優の子。Gカップ美乳が売りの香川くるみちゃん、21歳』

目の前にちらつく裸の女の画像を海斗は鬱陶しげに手で追い払う。星夜が動画の再生ボタンを押すと、ベッドにいる裸の女が淫猥に動き出した。

『ほらほらぁ! このえっろい腰の動きはたまんねぇな。蓮の人脈使ってくるみちゃん紹介してもらおうかなー』
『沙羅に全然似てねぇし沙羅の方が可愛い』
『海斗さぁ、そうやって沙羅に対してもっと素直になれば良かったのに。カイくんはツンデレですねぇ』

 音量設定を最大にした携帯電話からは甘ったるい女の喘ぎ声が漏れている。海斗も星夜も演技の声で欲情するほど、もう青臭くもない。